CCDによるダストテイルの観測(フィルターワーク)


Written by K. Sugawara Updated on May.2, 1996
 彗星の尾にはプラズマテイルとダストテイルがありますが、
前者はガス(主にCO+、H2O+ )の発光、後者はダストが反射した
太陽光により輝いています。どちらもおおざっぱにいって彗星
の軌道平面に沿ってのびるため、地球上からは両者が重なりあっ
てみえることがしばしばあります。ダストテイルの構造を正確
に観測する場合はこの問題を回避する必要があります。
 では、ダストテイルのみの画像を得るためにはどのようにし
たらよいでしょうか。幸いにして両者は異なるしくみで光って
いるのでそのスペクトルが違います。プラズマテイルは、発光
成分(イオン)によって固有な波長のみに光を放つ輝線スペク
トル、ダストテイルはほぼ可視光全域にわたる連続スペクトル
を持ちます。そのため、プラズマテイルに含まれる輝線だけを
カットするフィルターをかければ、CCDに到達するのは連続
光成分のみとなり、ダストのみによる成分を記録することがで
きます。
 具体的には、市販のCCDカメラの場合(CCDにより波長
特性が異なる)は、以下のものが価格・入手のしやすさからお
すすめです。

	・富士フィルム製 BPB55(アセテートフィルター)
		さらに、
	・赤外カットフィルター(ケンコー製など)を重ねて使用
	
あわせて、数千円以下で入手できます。赤外カットフィルター
は、BPB55では透過してしまう長波長側のプラズマテイルの
成分をカットする役割をします。


 なお、この組み合わせではかなり狭い波長域をねらっている
ため、光量が少なくなるのが欠点です。また、ごくわずかにプ
ラズマテイル中のH2O+の光が混入する点に注意が必要です。
 

補足

  百武彗星に適用した実際の観測例をごらんください。

 詳しくは、HB彗星観測者のためのホームページ(みさと天文台) をあわせてご覧下さい。